先輩と合流後、早速向かったのは「モエレ沼公園」。世界的なデザイナーの一人であるイサム・ノグチ氏のデザインした建物と空間が以前から気になっていたんですよね。在住していた頃にはまだ無かった?みたいでずっと行ってみたかったスポットなのです。
建物自体のデザインばかりでなく内部のガラス張りの構造が美しい・・・。詳しくはないものの昔からデザインに関心があり、建物のデザインって興味があります。時計もそうだけど建物みたいな立体的で機能的な構造やデザインを考えれる人って凄いですよね・・・。
「他にも行きたいところある?」と気さくに聞いてくれる先輩に甘えさせて頂いてリクエストしたのがかつての母校と学生アパート。残念ながら学食は時間外でしたが青春時代にお世話になった場所や建物から見る景色は不思議なくらい時間の経過や違和感を感じませんでした。まるで昨日までずっとここに居たみたいに・・・。
直後に向かったのが大学生の頃に住んでいたアパート。夕暮れ時という時間帯のせいなのかなんだかタイムスリップしてしまったような気持ちに・・・。
「友人らと徹夜でゲームとかして遊んでたよな・・・。朝6時過ぎに解散してそのまま寝る。みたいな(笑)」そんな話を先輩としていると、この夕闇の向こうにあるかつての自室に自分や友人たちがまだいるような錯覚にとらわれました。昔の自分を俯瞰して見たような・・・過去の自分とすれ違ったような・・・なんとも言えない不思議な気分になりました。
・・・これまでも心のどこかで気がついていたけど目をそらしていたであろう事実にここでようやく確信がもてました。ああ、私はここに魂の一部のようなものを置き忘れて来てしまったのだと。
かつてそこに最高に楽しい思い出があったことは間違えなく、その喜びと幸せの光が強すぎてずっとそこに留まっていたい気持ちがありました。しかしその幸せが破壊される出来事が次々と起こったのです。家族や恋人、そして友人の病気、社会の荒波、悲しく辛い別れなどなど・・・。
最後に私は心に深い傷痕と未来への不安を抱えてこの地を去りました。そこから私の戦争とも言える日々が始まったのです。当時、今以上に弱く未熟だった私は非常に憔悴し、狼狽しながらあゆみを進め始めました。それは前進できているのかそれとも後退しているのかもわからないようなひどく辿々しいものだったと思います。
今回こうして自分の第二の故郷である北海道を訪れることができるまでにもたくさんの出来事がありました。敬愛した父との死別、妻との別れなど・・・。私がずっとこの場所へ帰ってきたかったのは私の人生の中で最も「自分が幸福だった居場所」がここだったからなのでしょう。私の中の「戦争」が始まって以来「ここ」以上に光り輝く居場所は無かったのですから・・・。
かつて強く光り輝いた“居場所”はもう既にここには在りません。私を取り巻く環境や状況は少しずつ変わり続け、再び私が幸福を感じることが出来る役割と居場所が出来つつある実感があります。
・・・自分で言うのもなんですが色々あって少しは成長出来たのかもな・・・。ずっと心の縁であったこの場所や美しい思い出にはこれ以上留まっていられない。
もう“ここ”に戻ってくる必要が無くなるように今いる“居場所”が最高に光り輝くものとなるよう祈りつつ前進します!
(続く)